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フィレンツェ編5

サルバトーレ・フェラガモ

Z子の悲劇 ~フィレンツェ編5~ 


イタリアは、「ブーツの形をした国」と呼ばれ、その見かけ通り靴やバッグ等の革製品の本場ですが、中でもフィレンツェはフェラガモで代表される革製品のメッカと言われる街です。ブランド物は別格として、ブランドを気にしなければローマの1/3の値段で同じ革製品が手に入るのがフィレンツェなのです。ヴェッキオ橋の周辺では、カシミヤ裏地の立派な牛革手袋が10,000リラ(約600円)で買えるんです。

そして、フィレンツェで一番の楽しみは、市が決めた日に一斉に始まるバーゲンセールです。フィレンツェの冬のセールは、例年1月第2週頃が解禁日で、フェラガモ、グッチ、プラダ、アルマーニなど、すべての有名ブランドが関を切ったようにバーゲンを開始します。このバーゲンセールに合わせた日本からのツアーが組まれているくらいですから・・・。(何しろ、セール期間中ブランド店がローマでは20%オフのところ、フィレンツェでは50%オフなのです。)

特に、フェラガモの本店では日本人向けの地下特設バーゲン会場が設置され、入場制限された行列がビルディングを取り巻いてしまうほどの日本人で賑合うのです。季節や年式落ちとは言え、フェラガモの靴を手にする?(足にする?)ことは、多くの人民の夢でもあります。Z子とぼくも典型的な日本人の例にもれず、行列にこそ並ばなかったものの、フェラガモバーゲンに行ってしまいました。日本で数万円もする靴やバッグが、1/3~1/4の値段で雑然と並べられていました。Z子は定番のヴァラ(VARA)を、ぼくはスエードのカジュアルシューズを手に入れた?のです。これで、ついに、Z子とぼくもあこがれのフェラガモ・オーナーとなったわけです。

そして、帰国後、にわかフェラガモ愛用者のZ子とぼくは、成人の日の祝日に、おニューのフェラガモを履いて街へと繰り出したのです。2人で博多キャナルシティをしばらくブラブラした後、Z子が「足が痛~い。わたし、フェラガモ合わないみたい。」と言い出し、隣接のホテル・グランド・ハイアット=地下ロビーのキャナル(運河)に囲まれたバー「フィズ」で休むことにしました。Z子は、「お母さんもフェラガモは合わないって言ってたし、遺伝的に私の足にも合わないみたい。」と言う結論に、早々と達してしまいました。Z子のフェラガモは今でも下駄箱のVIP席に眠ったままです。


ぼくはと言えば、キャナル内のバー「フィズ」にZ子を残して、トイレに立った折、不覚にもグランド・ハイアットのキャナルに落水してしまったのです。ホテルの床とキャナルは黒い大理石製の縁取りのないデザインで、バー「フィズ」は幅3m/深さ30cmほどのキャナルにグルリを囲まれています。ぼくは光沢のある大理石の床と水を張ったキャナルの区別がつかず、ごく自然にAndante*で歩きながら入水してしまったのです。膝まで水に浸かってしまい、初めておろした日に、一張羅のスエードのフェラガモを台無しにしてしまいました。所詮、ぼくら貧乏人は、フェラガモとは縁がなかったということでしょうか?

ちなみに、その日運河に落ちたのは、ぼくだけじゃなかったのです。晴れ着を着た新成人のお嬢さんも落っこっちゃったらしいのです。ぼくは、ハイアットオープン以来20数人目の落水者だそうです。 現在、キャナルの淵には、落下防止用の観葉植物の鉢が敷きつめてあります。

このあと、フェラガモを履いたZ子は痛い足を引きずりながら、ずぶ濡れになったぼくのソックスの代わりを求めて、博多キャナルシティを走りまわったのでした。

*Andante(アンダンテ)=音楽用語でゆっくり歩く速さという意味の速度表記



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